水道法の一部を改正する法案(以下、水道法改正法案)は、昨年の第193回通常国会で閣議決定されたものの政権の混乱により継続審議となり、第194回臨時国会では審議には至らず衆議院の解散で廃案となった。第195回特別国会では再上程に至らず、そして今年1月に開会した第196回通常国会で、再上程が見込まれている。
この間、水道法改正法案の内容が整理される作業プロセスにおいて、私たち全水道は現場に働く労働者として組織対応を重ね、事業の基盤強化に向けた取り組みを展望して課題の検討・共有を進めてきた。一方、PFI/コンセッションを導入する「水道事業での公共施設等運営権の設定」については、かえって事業水道の基盤を損なうものとして多くの問題点を指摘してきた。しかし「公共サービス・資産の民間開放」を推進する安倍政権の意向を反映し、最終的には「水道施設運営等事業」として、公営事業の中で許可される仕組みが盛りこまれた。水道法改正案は、基盤強化を展望する施策を基本軸に据えながら、一方でPFI/コンセッション事業を促進する玉石混合の内容を持つこととなった。安倍政権は「公共サービスの産業化」として「生命(いのち)の水」のライフラインである水道事業に触手を伸ばした。
このため、全水道は水道法改正案の国会審議において、PFI/コンセッション事業の問題を明らかにし、法案に賛成・反対ではなく水道がすべての人々の暮らしに関わる重大な事業であり「徹底した審議を求める」という立ち位置を確認し、院内外の行動を積み重ね、「野党共闘」や広範で充実した審議を求めてきた。この全水道の対応は、国会議員はじめ関係する人々とともに水道事業の重要性とPFI/コンセッション事業の問題点について認識を深めることができたという意味では、一定の成果を上げることができた。
しかし安倍政権とその支持・補完勢力はPFI/コンセッション事業による経済政策の進捗を誇示するために今国会にはPFI法改正案も準備し、マスコミによる「水道事業を民間で運営」などのプロパガンダも続いている。
全水道は、予想される水道法改正案の再上程・審議においても、現場実態を知る労働組合として、改正案におけるPFI/コンセッション事業・「水道施設運営等事業」の問題点を明らかにし、あらためて徹底審議を求める。水道事業の「基盤の強化」方策が十分に議論され、水道事業の安全・安心と水の公共性を社会経済的につくり出すために、水道事業と現場の労働の重要性が再認識されなければならない。法案審議は、多くの人々にそれらを訴えていく絶好の機会である。
全水道は、国会内で組織内外の議員との連携を強固に、労働者・市民との連帯を拡げ、水の公共性をめぐる広範な運動に取り組み、産別運動の前進で水道事業「基盤強化」の実現をめざすこととする。
以上、決議する。
2018年1月26日
全日本水道労働組合
第145回中央委員会