安倍政権はいわゆる「アベノミクス」の三本目の矢である「民間投資を呼び起こす成長戦略」が思うように軌道に乗らず、実体経済の改善が見られないなかにあって、PPP/PFIを「新たなビジネス機会」や「成長の起爆剤」として位置づけている。
そして政府は、安倍政権の強い要請を反映し、2013年からの10年間でPPP/PFIの事業規模21兆円を達成することを目標に掲げ、地方公共団体に対しては、公共施設等の整備や運営等の方針策定の際に、「優先的検討事項」に沿ってPPP/PFI手法の導入を運用するよう働きかけを強めている。
そのようななかで重点的に進めようとしている水道・下水道や空港のコンセッションについては、すでに諸外国において再公営化の潮流があるにもかかわらず、先行事例への報償ともいうべき特例的なインセンティブを用意して無理にでも進めようとしながら、それぞれの地方公共団体へは、特別交付税措置や交付金、地方債活用の特例等を飴にPPP/PFIへの誘導に躍起になっている。
これら安倍政権の動きは、PFI法の本来の目的である「より効率的かつ効果的な公共サービスの提供」から乖離しているばかりか、アベノミクス失敗のツケを市民の共有財産によって補填するものであり、断じて容認することはできない。
また、森友・加計問題や共謀罪などによって、説明責任や追及を逃れるために閉幕を急いだかのような第193回通常国会は、水道法改正案にかかる審議も控えていたが、具体的な法案の審議には至らず次期国会へ継続審議となった。これまで私たち全水道は、改正法案の分析はもとより、法案作成に係るプロセスから法案審議に至る状況まで、あらゆる場面において「広範で国民的な論議を」と各方面に要請してきたが、強制終了のような国会閉幕劇によって審議すら行われなかった状況に戸惑うばかりか、政権の水道事業に対する軽々な扱いに対して憤りを持つものである。
水道法改正案への今後の取り扱いは、時間的猶予を得たともいえる次期国会への対応について、さらなる成熟した審議を求めるとともに、改正法案第24条に象徴される「公共施設等運営権の設定(コンセッション)」について、その問題点の啓発や周知活動に精力的に取り組んでいかなければならない。また、改正案を受けて各地域で「運営権の設定」をめぐる混乱が想定される。私たちは責任ある水道労働者の立場として、職場から単組-地本-本部を貫く政策力・交渉力強化で闘う準備を整えておかなければならない。
いずれにしても水道の問題は、その事業の責任者たる地方公共団体が、それぞれの地域事情や市民・住民等の意向などを慎重に勘案し、十分に議論の上で自主的・自律的に行うべきものであり、いわば「自治の問題」である。それにもかかわらず、国がPPP/PFI手法の導入へと誘導することは、憲法第94条で保障された地方自治体の財産管理に関する自主性・自律性を損なうものであり、ひいては憲法第92条が「地方自治の本旨」の下で保障する団体自治を形骸化するものである。
私たち全水道は、市民・住民の共有財産である生命(いのち)の水である水道について、持続性そのものを危うくさせる「新たなビジネス機会」や「成長の起爆剤」という動きについて、すべての市民・住民と連帯して、その対立軸となりうる体制を整え最後まで闘うことを決意する。
以上、決議する。
2017年7月29日
全日本水道労働組合 第71回定期全国大会