大阪市廃止・特別区設置住民投票に対する談話

11.02

大阪市廃止・特別区設置住民投票に対する談話

 11月1日、大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票、いわゆる「都構想住民投票」が行われ、反対票が賛成票を約1万7千票上回り、大阪市の廃止と特別区の設置は否決された。

 いわゆる都構想を巡っては、2015年5月に「大阪市における特別区の設置についての投票」が実施され、1万票余の僅差で否決されており、今回が二度目の否決となる。

 大阪維新の会は結党以来「大阪都構想」を掲げ、偽りの改革を前面に押し出し、維新の会の「政策」に反対する人々に敵対し、分断と対立を煽ることによって支持を得てきた。これは現自公政権にも通ずるものであり、この分断政策により社会の分断と人々の対立は深刻なものとなっている。

 これまで様々な課題を巡って、いくつもの地域で住民投票が行われてきた。しかし、住民投票は世論を二分する問題であるため対立が表面化し、当該地域は分断されてきた。為政者が世論を二分する政策などを提案する際には、熟慮にも熟慮を重ね、異なる意見を受け止め、丁寧な説明を重ねて十二分に議論を行った上で、可能な限り一致できる点を見いだし、合意の上で住民投票を行わなければならない。

 今回の大阪市における住民投票では、法定協議会での紛糾や協定書が市議会で否決されたことなどから、直接市民に賛否を問うというもので、議会を軽視したものに他ならず、極めて安易で危険な選択だと断罪せざるを得ない。そればかりか、府知事や市長がこれまで出されていた様々な不安や不明な点などに丁寧に答えることもなく、大阪維新の会の主張にも明確な根拠は見当たらない。このような行為は市民への背信である。

 その上、今回は、前回反対していた公明党が、大阪維新の会の恫喝に屈する形で賛成に回っている。市民に十分な説明もなく方針を変更することは問題があると言わざるを得ない。

 「都構想」では、二重行政解消などと称して大阪市水道事業を「府域一水道事業」とするとされており、大阪市民の財産である水道事業が施設・職員ともに府に移管されることとなっていた。市民の財産を何らの対価もなく府に移管するなど許されることではなく、事業が不安定なものになりかねず、ガバナンスの面でも懸念が大きい。

 このため、大阪市水道労働組合は水道事業を守るべく奮闘された。維新の政策に振り回されながらも、大阪市廃止阻止に向けて取り組まれたすべての人々に感謝申し上げる。

 今回の住民投票で大阪市廃止が否決されたことは歓迎するものではあるが、一度深まった対立と分断は簡単に修復されない。改めて為政者による政治の重要性と、その為政者を選ぶ選挙の重要性を痛感するものである。

 対立と分断は寛容性を失い、社会と人々を荒廃させる。多様性が求められる社会にあって、それと相反する政策を選ぶことは自らを苦しめることに他ならない。改めて私たちは政治と社会のあり方、そして国や地方行政、水道・下水道事業のあり方をすべての人々が考え、未来に向けてあらゆる意見を排除せず、市民とともに考え、行動するものである。

 

2020年11月2日

全日本水道労働組合

書記長 村上彰一

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