「第2回水道施設運営等事業の実施に関する検討会」で二階堂委員長が意見表明
「第2回水道施設運営等事業の実施に関する検討会(以下 検討会)」は、改正水道法の施行に向けて、水道施設運営権の設定に係る許可の基準と留意すべき事項や、水道施設運営権の設定に係る許可申請時の実施計画書の記載内容、改正水道法第24条の4に規定する水道施設運営等事業の実施に際して地方公共団体が検討すべき事項等について検討することを目的として、学識経験者、消費者、弁護士、業界関係者等※の幅広い構成員からなる「水道施設運営等事業の実施に関する検討会」が開催されている。
<※委員>
足立 慎一郎 株式会社日本政策投資銀行地域企画部担当部長PPP/PFI推進センター長
石井 晴夫 東洋大学経営学部教授
佐藤 裕弥 早稲田大学研究院准教授
高橋 玲路 アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士
滝沢 智 東京大学大学院工学系研究科教授
藤野 珠枝 主婦連合会住宅部
本多 裕孝 公益社団法人日本水道協会水道技術総合研究所主席研究員
與三本 毅 一般社団法人日本水道運営管理協会運営委員長
厚労省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku_470779_00001.html
検討会では、検討事項として
(1)水道施設運営権の設定に係る許可の基準と留意すべき事項
(2)水道施設運営権の設定に係る許可申請時の実施計画書の記載内容
(3)水道施設運営等事業の実施に際して地方公共団体が検討すべき事項
(4)その他
以上の事項について検討が行われ、最終的にパブコメを経て夏頃に公表することになっている。
3月22日に開催された第2回検討会では、関係者からのヒヤリングを行った。
ヒヤリングでは、宮城県企業局、株式会社ウォーターエージェンシー、そして全水道からは二階堂中央執行委員長が出席した。
全水道はこれまで改正水道法において「第24条水道施設運営権の設定」について反対してきたが、改正水道法が公布されガイドラインなど許可基準について検討がすすめられることから、国会での法案審議における政府答弁で問題点・疑問点が解消されず修正案提出にいたった経過なども踏まえ、改正法の対立点を理解し、問題点・疑問点を解決・解消することなどについて、二階堂中央執行委員長から意見を述べた。
意見では、マスコミ調査による「全国自治体首長アンケート調査」の結果や、地方議会では法案成立前からコンセッション方式反対の意見書が採択されている状況、自治体・事業体のみならず国民、利用者も不安視していることなど改正水道法を取り巻く状況について触れ、その上で、コンセッション方式の導入にあたっては、空洞化する自治体・公営事業体から失われる人材・技術が機能するか、疑問の残る「モニタリング」体制、形骸化する総括原価主義、規制困難なコンセッション利益・配当・役員報酬、譲渡・投機が懸念される「運営権」、混乱する災害時対応など慎重な検討を求めた。
また、国会審議における経過を重く受け止めて検討が行われること、水道施設運営事業者の継続が困難になった場合における措置なども検討されることになっているが、そもそも継続が困難になるような事業者の選定が行われないような厳しい許可基準の設定を求めた。
具体的には、3点
<料金、財務関係>
水道料金は総括原価方式により、利用者に対して極めて透明性が高いものとなっている。同時に利用者から収入した料金は、維持管理のみならず管路や施設更新などに再投資されている。
コンセッション事業者においても、当然、コンセッション事業者の財務状況(決算・予算など)をはじめ、役員報酬、株主配当、支払い税額、施設への投資などの透明性を高めることが強く求められる。自治体の情報公開条例に基づく情報開示でなく、また、日常的な企業内の情報開示に留まることなく、地方議会への報告・承認なども行わなければならない。水道料金の総括原価が不透明になることがあってはならない。
<災害対策>
海外のPFI/コンセッション水道事業で災害を経験し成功した事例は示されていない。
災害時対応は水道事業の認可を有する自治体が最終責任を負うことになっていると説明されている。コンセッション事業者は契約上、災害対策などのリスク(災害時の管路・施設復旧など)が予め明確に責任分担するよう契約できる基準とすることが説明されているが、あらゆる災害を想定した十分な災害対応が可能な厳しい基準が設定されること。
※自治体・事業体側に職員が不足する中で、一般的に他都市との災害支援協定などが説明されているが、災害対策時における自治体・事業体側の主体的な責任ある体制をどのように確保するのか自治体・事業体が市民への説明責任を果たすこと。
<モニタリング>
モニタリングでは、事業認可が残る自治体の責任で実施計画を作成、厚労大臣が実施計画・災害対応を審査し事業の確実性・妥当性の確認し、許可することで担保するとし、ガイドラインで許可申請の留意事項、省令で許可基準の技術的細目を示すとしているが、そもそもモニタリングは経験に基づく技術的な裏付け、財務関係についても企業会計や料金知識などが基礎となって行われるものだが、一定の指標だけを満たしただけでモニタリングが担保されるか極めて問題。
以上のことを述べた。
全水道は今後の検討状況を注視しつつ、積極的な対応をすすめていきたい。