昨日、連合と経団連は「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」をとりまとめ、
内閣総理大臣に報告しました。ポイントは
①残業は原則月45時間、年360時間を上限とする。
②繁忙期に限り年6カ月まで月45時間を超える残業を特例で認める。
③特例の上限は単月で月100時間未満とする。2~6カ月では平均80時間を上限とする。
④特例の延長分を含めても年720時間以内でなければならない。
⑤終業から始業までに一定の休息時間を設けるよう企業に努力義務を課す。
⑥メンタルヘルス対策やパワハラ対策について政府と検討を進める。
⑦導入~5年後以降に見直しを検討する。
となっています。
これまで、事実上青天井であった時間外労働に一定の上限規制を設けたこと、
パワハラ対策について政労使の検討が進められる点については評価しつつも、
繁忙期のみ、また特例条項とはいえ月100時間未満、2~6カ月の平均80時間、年720時間の残業容認など、
長時間労働を是認するものと言わざるを得ません。
連合は「労働基準法70年の歴史の中での大改革」と言ってはばかりませんが、
本気で長時間労働の是正を行おうとしたのか、多いに疑問です。
経団連との合意に至る経過では、単月の上限規制について経団連が「100時間以下」を主張し、
連合が「100時間未満」を主張する中で平行線をたどったとしていますが、
その差はわずか1時間(99時間か100時間かの違い)でしかなく、意味のある「攻防」とは言えません。
連合が労働者を代表する立場である以上、せめて月60~80時間を主張すべきだったのではないでしょうか。
あわせて、繁忙期の上限について
「首相が労使に要請」する形で労使合意に至ったというプロセスについても多いに問題があると言わざるを得ません。
労働時間問題は、本来政治の介入を排除し、労使協議のもとに進められなければなりませんが、
「首相の要請」はまさに政治の介入そのものであり許されません。
いずれにしても、この合意事項のもとに「働き方改革実現会議」で
今月末にとりまとめられる予定の「行動計画」に盛り込まれる見通しとなっています。
今後はこの「行動計画」に基づいて労基法改正等が進められる方向ですので、
それぞれの組織で36協定の見直しや厳格化が求められることになります。
これまで多くの労働者が過労死・過労自殺に追い込まれ、
多数の犠牲の上にようやく長時間労働是正の気運が高まったにもかかわらず、
このような結果になったことは極めて遺憾です。
引き続き時間外労働の上限規制引き下げを求めていくものです。
また、正規労働者と非正規労働者との同一労働同一賃金(均等待遇)についても、
「働き方改革実現会議」による不十分きわまりない「指針」に依存することなく、
真の均等待遇実現に向けて取り組むものです。