水道法一部改正

03.22

懸案の水道法一部改正。
全水道として、現段階の見解を記載しておきます。

長いのですが、ご一読いただければ幸いです。

 

 

水道法の一部改正に係る全水道の考え方(2017.3.22現在)

 

はじめに

政府は、現在会期中の通常国会において、水道法の一部改正法案を提出する。
 今回の法改正の「理由」は、「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、所要の措置を講ずる」とされている。
 振り返れば、このような水道法の大きな改正が国会審議の場に上程されるのは、第三者委託を導入した2001年以来に次いで16年ぶりというもので、今回の法改正については、時代の変遷とともに水道法自体が「現在の社会情勢に合わなくなってきた」という側面と、加えて「さらなる民間企業の参入を想定・期待する」という二面性ある法整備ということができる。
 私たち全水道はこれまで、水道事業基盤強化方策検討会や、水道事業の維持・向上に関する専門委員会(厚生労働省)などの有識者会議の場面で、全水道の立場やその考え方を発言しながら、日本の水道政策の行く末について影響力を発揮・注視してきた。
 3月7日に改正法案について閣議決定がされ、間もなく本格的な国会審議が行われようとしている。
 今回の法改正の本質を理解するとともに、これからの対応や行動について、全水道に結集する組織のみならず、市民全体で共有したいと考える。

 

改正の概要と全水道の立ち位置

 水道法の一部を改正する法律案では、水道事業の維持・向上に関する専門委員会の報告等にもとづいて、法律の目的である「水道の計画的な整備」部分を「基盤強化」に変更することを前提に、①関係者の責務の明確化、②広域連携の推進、③適切な資産管理の推進、④官民連会の推進、⑤指定給水装置工事事業者制度の改善と、5点にわたる改正を行うこととしている。
 ①関係者の責務の明確化と②広域連携の推進では、法律の目的における「水道の計画的な整備」を「水道の基盤の強化」に変更するとともに、国・都道府県・市町村・水道事業者等に対して、「水道の基盤の強化」に関する責務を規定する。とくに都道府県には、水道事業者等の広域的な連携の推進役としての責務を規定することとしている。
 ③適切な資産管理の推進では、水道事業者等に対して、点検を含む施設の維持・修繕・台帳の整備を義務付けるほか、水道施設の計画的な更新の実施やそれに要する費用を含む収支見通しの作成や公表に関する努力規定を設けることとしている。
 ④官民連携の推進では、私たち全水道がもっとも懸念する要素である、水道施設に運営権を民間事業者に設定できる方式、いわゆる「コンセッション方式」について導入する「仕組み」を明記するものとなっている。
 ⑤指定給水装置工事事業者制度の改善では、これまでの民間活用方針のなかで、業者数が膨らみ把握が困難となっていた問題について、5年間の有効期限を設ける更新制度を創設するなどとしている。
 現状を分析し、検討してきた厚生労働省では、さまざまな立場の声を集約し改正条文を作成してきたとしており、私たち全水道では、現場を知る労働者の意見を代表しながら改善を要望し、法改正に向けてその実現を働きかけてきた経過にあり、改正内容のすべてを軽々に「反対」とは判断しないことにしている。
 事業の責任や働く誇りをかけて、市民の生命(いのち)の水を守る立場を貫かなければならないと考える。

全水道の問題意識

 今回の法改正において、私たち全水道は、現政権の国策ともいえる水道民営化路線の官民連携の推進としての「運営権を設定する仕組み」を導入することについて、極めて危険だと考える。
 第二次安倍内閣において、現在ある多くの公の領域を市場に開放し、公共サービスの産業化を促進させ、その結果としての経済成長を目論む経済政策は、とりわけ水道事業にとって「馴染まないもの」だと考える。
 運営権の設定、いわゆるコンセッション事業については、完全民営化へ進む最終プロセスとしての機能を内包し、これまでの公営水道の概念を根底から覆すものとして十分に注意をしなければならない。
 人材不足や迫る施設の老朽化対応、さらには人口減少に伴う給水収益の減少など、持続性が危ぶまれる水道事業に対する「解決策の一手」としてのコンセッション事業は、将来にわたる持続可能な水道事業への道筋を放棄し、その場しのぎを求める無責任な首長や政治家たちを温存助長するものである。
 民間企業が事業運営を担い、料金収受する権利を享受する仕組みである運営権の設定は、市民が生きるために企業の利益を支払い続けることでもあり、やはり水道事業にとってコンセッションは「馴染まない」ものである。

 

まとめ

 全水道は、日本各地で1日24時間、1年365日、1秒たりとも絶やすことなく水をつくり送りとどける責務を持った労働者が結集する労働組合として、責任ある行動をこれからも展開し続けなければならない。
 私たちが求めるは、いま事業の持続性も危ぶまれる多くの課題に直面している水道事業は、それらの課題はこれまでの官民連携の枠を超えた「運営権の設定」などといった民営化的手法によって即解決するものではない。問題はもっと別のところにあると考える。
 直面する課題の根本とは、市民・国民全体が水道事業に対する認識を深く持つということであり、市民・国民が水道事業の現状を知り、事業の将来に対してしっかりと関与することができる枠組みを構築することであると考える。
 水道法改正案では、法の目的を記す第1条を「事業基盤の強化」に改定する。厚労省では、改正案はその目的に即した内容であるとしている。
全水道はこれまで厚労省に対し、「コンセッション方式」の導入が「事業基盤の強化」の「仕組み」であるよりも、むしろ「コンセッション方式」導入が「事業基盤の強化」を損う危険があることついて警鐘を鳴らしてきた。
 しかし、国会審議において現状では、「コンセッション方式」を導入する「仕組み」に係って、改正法案を否決・廃案とすることは極めて困難である。この現状に、水道法改正案の国会審議においては、改正案がその目的とされている「水道事業の基盤強化」をどのように実効あるものとするのか、そのための改正とする審議こそ必要であると考える。
私たちは、水道事業において「運営権」による水道料金を収受する権利が売買対象となり、利権とされるような取扱いを許すことはできない。このことを前提とし、水道法改正案は国会審議において十分に慎重に審議されなければならないし、また同時に広く国民的な議論も求めていく。
 「コンセッション方式」による水道民営化路線は、安倍政権の「国策」といえる。大阪市をはじめとして、複数の地方議会ではコンセッション方式による水道事業の民営化が審議されてきたが、いずれも審議未了・継続とされている。コンセッション方式による水道事業に、安全・安心、住民の利益について多くの疑問があり、反対されてきたからに他ならない。しかし一方では、各地方にコンセッション方式による水道事業を推進する動きもある。コンセッション方式」導入への無責任な議論を横行させない取り組みが必要である。
地域で民営化路線に対する総力を上げた取り組みにも備えなければならない。

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