水道法の一部を改正する法律の成立に対する声明

12.07

水道法の一部を改正する法律の成立に対する声明

本日、衆議院本会議において水道法の一部を改正する法律案が、与党と一部野党の賛成多数により可決・成立した。

改正水道法は、水道事業の基盤強化を前提としつつも、公共施設等運営権方式、いわゆるコンセッション方式の導入を容易とする法案であり、全水道は水道法改正がこの国に住むすべての人々の生活に直結する重大な課題として、コンセッション方式の導入に反対しつつ、慎重かつ充実した審議を求めた。

水道法はこれまで幾度かの大きな改正が行われてきたが、このような与野党対立法案となったのは初のことであり、コンセッション方式の導入が法案に盛り込まれたため、真に必要な基盤強化策の議論が極めて不十分となったことに強く抗議するものである。

全水道も参画している厚生科学審議会生活環境水道部会での議論や、水道事業の維持・向上に関する専門委員会、水道事業基盤強化方策検討会での議論が活かされていないと言わざるを得ない。この責任はすべて政府にあり、国は本当に必要な基盤強化策に踏み込むつもりがないものと強く批判する。

先の第196回通常国会における衆議院厚生労働委員会では、野党が再三にわたって充実した審議を追求したにもかかわらず、与党はわずか8時間程度のみで質疑を打ち切り採決した。第197回臨時国会における参議院厚生労働委員会では、11月29日、二階堂中央執行委員長が参考人として意見を述べ、特に財政基盤の脆弱な事業体、技術的基盤の厳しい事業体への対策強化とコンセッション方式導入の問題点を訴えた。改正法案の国会質疑では、内閣府民間資金等活用事業推進室に巨大水企業「ヴェオリア社」日本法人からの出向社員が在籍していることや、前内閣府大臣補佐官の欧州出張での疑惑が明らかとなるなど、水メジャーと呼ばれる巨大多国籍水企業への利益誘導との疑念が強まった。

海外では1990年代まで水道事業の民営化が進められ、政府と巨大水企業との癒着構造や、不透明な資金の流れ、不十分な水道施設への投資など様々な問題が続出し、現在では再公営化が進んでいる。にもかかわらず、日本においても水企業の癒着構造が露呈するなど、改正法の立て付けそのものに大きな疑惑が隠れていると言わざるを得ない。

ごく限られた一部の自治体が経済的思考のみに傾注し、市民の水を、外資を含む巨大水メジャーに売り渡す方策と、公営で事業を継続する自治体への必要な支援策を混同した政府の方針を許してはならない。法案の審議に際して、13の自治体議会が法案の廃案を求める意見書を可決した。政府は、これらの自治体を含む全国ほぼすべての自治体が、公営の水道事業を継続しようと努力していることから目を背けてはならない。

全水道は安全・安定・低廉という水道の基本原則を堅持し、市民生活や企業活動を支える社会的基盤としての水道を守り発展させてゆくため、水政策の前進に向けてさらに取り組みを強化するものである。

2018年12月6日     

全日本水道労働組合

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