□インデックス
政・省令等に関する要望事項
1.委託基準に関する要望
(1)再委託の禁止について
(2)第三者委託に関わる事項
2.広域化に当たっての要望事項
3.確保すべき政策誘導策
(1)受託契約に当たっての甲・乙対等の確保と
料金の高騰を抑制する施策について
(2)広域化を推進に当たって配慮すべき施策について
◇水道法改正案に対する全水道見解
1.はじめに
政府は3月21日、予てから検討されてきた水道法の一部改正案を今通常国会に提案することを閣議決定した。このことによって、早ければ今国会での法案成立、来年4月からの同法施行が確定することになる。
この水道法改正案に関して、2月25日付日本経済新聞、3月15日付朝日新聞紙上において、同法の検討がされてきた経過や趣旨を著しく歪め、あたかも水道事業の民間委託化を進めることが同法の趣旨であって、「民営化へ道を開く」ものであるとの報道がされている。
こうした一部のマスコミ報道は、単に同法の趣旨や検討経過を歪めて伝えていると言うだけではなく、日夜を問わず、「安全な水供給」のために努力している水道労働者の仕事の重要性を否定し、結果として、業務の民間委託化や経営の民営化までを煽る内容となっており容認することはできない。特に、上記の報道が、日本経済新聞と朝日新聞と言う日本の4大新聞の中でも「良識もっている」と言われる2紙であることを考えれば、この影響は極めて大きく、全水道組合員の中にも動揺が広がる恐れがある。
全水道は、旧厚生省が主管し、水道事業の制度問題を検討してきた「水道基本問題検討会」及び「水道部会」の審議に関わりをもち、これまでにも全組合員に対して経過やその内容の評価と問題点等を明らかにしつつ、法改正にあたり、引き続き実現を求めるべき政・省令、政策誘導策などについてもその基本的考え方を明らかにしてきたところである。
しかし、以上のようなマスコミ報道がなされるに至り、組合員に与えるその影響の大きさを踏まえ、水道法の一部改正案が閣議決定されたのを期に、改めて、同法改正のための論議経過、改正の趣旨、今後の課題等について全水道としての見解を全組合員に明らかにするものである。
2.水道法改正に至る検討経過について
(1)「水道基本問題検討会」を設置するまでの経過
1990年代の初頭、日本経済は深刻な不況に陥った。またこの時期は、経済的なグローバル化が進む一方において、東西冷戦構造の崩壊を受けて東側諸国が市場経済に取り込まれ、世界的な経済競争が激しさを増し、いわゆる「大競争時代」が訪れることとなった。
こうした中で日本経済は、不況を克服して世界的なコスト競争に打ち勝つために、日本経済の構造改革の必要性が叫ばれることとなった。
この構造改革のキーワードが「内外価格差の解消」であるために、90年代の後期に入り、産業基盤である公共料金分野における「改革」が政治的な焦点となった。それが橋本首相(当時)の直属の機関として設置された「物価安定政策会議」である。
物価安定政策会議は、公共料金分野に「競争導入」を図ることによって効率化のインセンティブを働かせ、料金の引き下げを目指すこととして、業務に関する地域指定などの参入条件を規制する措置の撤廃や独占事業とされる事業の独占の根拠の見直しが行われ、タクシー、航空、バス事業などの参入規制が撤廃されたほか、通信、電力、ガス事業などにおいては、回線、送電線、ガス導管などのオープン化が実施されてきているのである。
水道事業についても、こうした公共料金分野における改革の一環として、事業の「公設民営化」の提言が出されてきたほか、外部監査制度の活用により、事業者に効率化計画を立案させ、その計画を外部監査の審査の対象とすることによって、効率化のインセンティブを働かせるとの対応がされてきた経過にある。
このように、水道事業の経営のあり方を含む制度問題は当初、水道事業が置かれている状況や水環境の現状を踏まえることなく、経済的側面のみで議論されてきた経過にある。
近年の化学物質が氾濫する社会にあって、その処理・処分の問題から自然環境汚染は深刻な状態にある。
人の飲用に適した水を供給することが目的である水道事業は、水道水源である河川や湖沼などの水環境が良好であってはじめて運営が可能となる事業であるが、近年の自然環境汚染が深刻となる状況の中で、直接収益に結び付かない「安全対策」の強化が求められ、経営環境は極めて厳しい条件の下での運営が強いられてきた。とりわけ、日本の水道事業においては、財政的・技術的基盤が脆弱な小規模事業体が圧倒的多数と言うことから、水環境の悪化に対応する体制が十分とは言えない状況があり、水道事業の使命である「安全な水を供給」する体制自身が揺らぐ恐れがあるなどの新たな問題が生じる状況にあった。また、事業体の規模の違いや過大な水需要予測による水源開発などによって、料金格差は10倍にも及び、公営企業としての水道事業の制度的な枠組みを再確立することが求められてきた。
水道行政を所管する厚生省は、このような水道事業の制度的枠組みが動揺する現状において、経済的側面のみで拙速な水道事業のあり方論議が進むことを懸念し、98年の5月に「水道基本問題検討会」を立ち上げ、21世紀に向けた水道事業の制度的枠組みの検討を開始したと言うのが出発である。
(2)水道基本問題検討会における論議経過と方向
今日までの日本における水道行政は、赤痢やコレラなどの伝染性の強い疫病に対する対策の観点から、衛生行政として実施されてきた。とりわけ戦後は、市町村公営主義を前提として普及率の向上に努めながら、一方での水需要の増に伴って、新たな水源開発や用水供給事業を目的とした広域的水道事業が手掛けられてきた経過にある。
近代水道から100年が経過した今日、日本における水道は約96%の普及率を誇るまでに発展してきたが、一方で、1万1千を越える水道事業体が存在する結果となり、新たな問題を発生させることになった。それは、市町村公営主義の一側面でもある訳だが、1万1千を越える水道事業体の圧倒的多くが財政的・技術的基盤も弱い小規模事業体であるために、化学物質を多用する現代社会における環境汚染、水道水源の劣化に対応した対策が十分とは言えない状況や、料金では10倍もの格差が生じてきている問題である。
一方、今日の行政のあり方については、「国から地方への分権、透明性と説明責任が求められる」のが当然とされる時代となっており、水道事業体にあっても、自立と自己責任が求められる時代となってきている。
このような水道事業が置かれた状況を踏まえ、「21世紀における水道事業のあり方を再設計する」ことを目的にして98年5月に「水道基本問題検討会」が設置され、翌年6月24日の最終報告の提出まで約1年1カ月の間検討が行われてきたのである。
この検討会の当初は、経済界代表や(株)日水コンの斉藤氏など、水道事業の民営化を主張する意見があったが、「現状では困難」という意見が多数を占めたことから、「民営化問題は将来の論議課題」として整理がなされ、水道事業の目的の見直し、現状の制度的見直し、循環資源である水を利用する水道事業の役割などが論議の焦点となり、具体的な施策が検討されてきたものである。
水道事業の目的の見直しでは、「清浄・低廉・豊富」と言う目的の内、「豊富は削除すべき」と言う意見が多数あったが、「将来も引き続き人の飲用に適した水を供給する」ことを前提として確認し、水質、水量、料金など、全国どこの水道でも達成しなければならない水準(ナショナル・ミニマム)と、「おいしい水」などの付加価値をつけることについては、地域の実態に即して地域住民が自ら決定していく水準(シビル・ミニマム)とに区分して考えて行くことが打ち出された。
水道事業の制度的な見直し問題では、水道事業における財政的・技術的基盤を強化する観点から、末端給水までの事業形態で広域的整備を推進すること、またそれに際しては、自己水源の放棄や遊休施設を発生させることなく、コストの縮減や技術者の確保を通じて、実際に経営基盤の強化や効率化につながるような計画とすべきことなどが提起された。また、水道法上の適用がされていない学校などの未規制水道や設置者責任となっている受水槽水道(簡易専用水道)における蛇口から出る水の安全性の確保を図る観点から、衛生規制を強化する方向が確認されることとなった。
循環資源である水を利用する水道事業の役割では、水道事業が水の循環系が健全に機能していることに依存して成立している事業であることから、水循環系における水道の位置づけを明確にし、水循環に係る多くの制度、関係者との間で強調と連携を図り、計画的、体系的に水源保全を図る必要性が提起をされた。また、マクロな水循環系に大きな影響を及ぼすおそれのある地球温暖化問題などの地球環境問題を踏まえ、水道事業の運営に当たっての省エネルギー化の適切な配慮が求められることが提起されている。
(3)水道部会における「水道法改正」論議の経過とポイント
以上のような水道基本問題検討会の「最終報告」を受けて、その施策を具現化するために、99年11月16日に厚生省生活環境審議会の下に「水道部会」が設置され、昨年の12月4日の「水道法一部改正」に向けた答申まで検討がされてきた。
水道法は、水道に関する事業法であるために、主要な論点は水道基本問題検討会報告の論点の内、水道の制度的枠組み問題が論議の中心であった。
したがって、課題としては、
1.水道事業における経営のあり方の見直し、
2.未規制水道、簡易専用水道のあり方の見直し、
であった。
未規制水道、簡易専用水道のあり方の見直しでは、事務局より、学校など、不特定多数が利用する水道でありながら、常時そこに住み利用していないことで水道法の適用除外となっている未規制水道については、管理が不十分なために事故が発生している実態があること、設置者の責任となっている受水槽水道においても、管理不十分な状況が多々あることなどから、「いかなる水道においても、蛇口から出る水の安全性を確保する」ことが必要で、その観点から衛生規制を強化する考え方が示されてきた経過にある。このことに対する水道部会の多くの意見は賛意を示すものであったが、特に、受水槽水道における水道事業体の関与の提起は、これまでが設置者の責任において保健所行政で対応がされてきた経過にあること、都市型水道においては受水槽設置件数が大変多いことなどから、水道事業体関係者からは異論の声が多く出され、昨年7月に出された「中間まとめ」の段階においては了解事項には至らなかった経過にある。
水道事業の経営のあり方の見直しでは、水道事業の経営基盤を強化し、広域的に事業を推進するための手法として、「第三者委託」の手法を活用すること、そのための条件整備の考え方が示されてきた経過にある。特に、第三者委託手法の活用にあたっては、現行水道法が「公営原則」を謳っているものの、民間経営を否定したものとなっていないことから、規制緩和が進む現状ではそれを踏まえざるを得ず、制度設計上の段階から民間事業者を排除することが出来ないと言うことになっている。
3.水道法一部改正案のポイントと問題点
以上のような検討経過を受け、12月4日、水道法一部改正に向けた「答申」が水道部会から厚生大臣あてに提出された。この答申を受けて、1月6日に発足した新厚生労働省健康局水道課によって改正案が成案され、内閣法制局における審査、協議を経て、今通常国会提案の法律案として3月21日の閣議で決定されたものである。
水道法一部改正案のポイントは、水道事業の広域化を進めるための手法として、第三者委託手法を制度化するために新たに規定を設けたこと、事業認可に関わる規定を弾力化し、届出制に改めたこと、未規制水道については、水道法上の適用を受けるものとして新たに規定したこと、簡易専用水道(受水槽)については、規模によらない貯水槽水道として概念を改め、水道事業者の関与を明確にした規定に改めたことである。
第三者委託を制度化するための規定では、「水道事業者は、政令で定めるところにより、水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を他の水道事業体若しくは水道用水供給者又は政令で定める要件に該当する者に委託することができる」(第24条の3第1項)と規定し、大きな水道事業体若しくは水道用水供給者が第三者委託による受託者となって、水道事業における経営規模を拡大し、水道水質の基準が強められる状況の中にあっても蛇口からでる水の安全性を確保することを可能としたものである。
ここで問題な点は、第三者委託における受託者について、「政令で定める要件に該当する者」として民間事業者を含めている点である。とりわけ、「政令に定める要件」として現段階的には、水道事業体における水道技術管理者と同等の資格として、「受託技術管理者」の資格を持つ者が一人いることが要件となっていることである。
これまでの水道基本問題検討会における論議、水道法改正を審議してきた水道部会の論議においては、現行水道法における「公営原則」を踏まえた広域化のための第三者委託の制度化との受け止めから、現行水道事業体だけが受託者たり得るものとの共通認識であったが、現行水道法が民間事業者を排除したものとはなっていないことから、それに対応したものとしてこの一文挿入されているのである。しかし法律は一人歩きをし、利害関係にある民間事業者からすればその利害を主張することになる訳であり、「安全な水を将来に渡って供給し続けてゆくため」の水道事業の制度的枠組みを検討してきた経過や改正案の趣旨がネジ曲げられる可能性がある訳で、民間事業者が受託者となる場合の政・省令は厳しくする必要がある。
水道は、自然的に独占が進む事業である。一度水質事故が発生すれば、一挙に大量の被害を生み出し、しかも人命に関わるものである。
こうした高い公共性を守るためには、「水道水の安全確保」は絶対条件であり、利潤追及と同時に目指せるものではないからである。
貯水槽水道における事業者の関与を定めた規定では、「貯水槽水道に関し、水道事業者及び貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適性かつ明確に定められていることを供給規定の要件に追加すること」(第14条の5)と規定され、同法施行後1年以内に供給規定の見直しが義務づけられている。
このことによって、これまで設置者だけの責任であった受水槽水道については、規模に関係なく、すべての受水槽水道について、事業体ごとの実情において、事業体と設置者の責任区分を明確にし、それに従った事業者の関与が求められることになった。
このことについては、利用者のニーズに応えて事業者自らが安全確保を図ることが重要であり、それに必要な要員と財源確保を図ることが必要である。
4.全水道の立場
すでに見てきたとおり、今回の水道法一部改正案は、水道水源の水質悪化が進む現状において、将来に渡り、水道は人の飲用に適した水を供給し続けて行くことを目的とし、その体制確保のための制度的な枠組みを再設計することにある。そのための手法として、水道事業体の経営規模を拡大し、財政的・技術的基盤を強化するために、水道事業を広域的に推進することを方向としたものである。
その意味では、日本全国の水道事業において、水質、水量、料金など、どこの水道でも達成しなければならない水準(ナショナル・ミニマム)を確保する端緒についたと言えるもので、利用者である国民・市民のニーズに応えたものであると考えられる。
問題点は、全水道が水サイクルの回復、貴重な水資源の保護、料金を抑制する立場から示した「広域化にあたって前提条件」が現実に守られるのか、第三者委託の活用にあたり、現行の大きな水道事業体が受託者となった広域化が現実に図られるのかが最大の課題である。
今回の水道法一部改正案の国会審議と平行し、政・省令、政策誘導策が検討されることになるが、上記の問題点は、今後検討される政・省令、政策誘導策の中で担保される課題である。
以上を踏まえ、全水道としては下記に示した内容を政・省令、政策誘導策に反映させるべく、民主党、社民党と連携し、国会審議の中で正府側答弁を引き出し、日本水道協会や連合・自治労と連携し、具体的な厚生労働省協議を全力で行ってゆくものである。
◇資料
政・省令等に関する要望事項
今次水道法の一部改正案は、「安全な水道水を将来に渡って供給する」ことを可能とするために、水道事業の制度的枠組みを整備・確立することが主たる目的である。
具体的な法改正のポイントは、従来の地方公共団体の協議に基づいた広域化手法に加え、第三者委託手法を新たに制度化することにより、日本の水道事業体の中で多数を占める財政的・技術的基盤の脆弱な小規模事業体の経営基盤を確立することにある。
一方、政府の「行政改革大綱」によれば、地方公共団体を1000程度に統合して行くことが提起されている。
このような状況を踏まえれば、今次の法改正によって今後は地方公共団体の統合と第三者委託手法を活用した広域化が同時に進展して行くことが考えられる。
私ども全水道は、今次水道法一部改正案の趣旨に賛同しつつも、具体的な同法の施行においては懸念される問題や十分とは言えない問題があると考えており、それを補うための政・省令や政策誘導策に関する要望を行うものである。
1.委託基準に関する要望
(1)再委託の禁止について
水道部会の「中間まとめ」に記載されている「再委託の禁止条項」は、改めて委託基準に明記すべきである。
(2)第三者委託に関わる事項
民間事業者が第三者委託における受託者となる場合、現行水道法上の水道技術管理者に対応した資格として、受託業務技術管理者の資格を有する者が一人いることが要件となっている。
今回の第三者委託における受託者として想定しているいわゆる大きな水道事業体の場合は、浄水場の運転・管理、その他の構造物や管路の管理や施設建設等においては、それぞれの部所において長年の経験を積み、技術を習得したプロフェショナルな多くの職員が配置されており、技術的ノウハウは組織的に蓄積され、重大な事故等が発生した場合には組織総体で対応することが可能となっている。こうした体制があってはじめて、常時「安全な水」の供給を可能としているものである。また、近年の水道水源の水質悪化の現状から、クリプトスポリジウムなどの対策を含め、「水道水質の管理強化が求められる」(水道基本問題検討会)とされている現状にある。このような現状や大きな水道事業体の体制に比べ、民間事業者が受託者となった場合には、技術的には一人の受託技術管理者によって対応することになるわけであって、小規模事業体の統合を通した広域化をはかっても技術的基盤を確保したとは言えず、供給される水道水の安全性が担保されたとは言えないと考えられる。
水道部会の「中間まとめ」における第三者委託のイメージによれば、その基本は、大きな水道事業体や用水供給事業者が受託事業者となることを想定しているわけだが、改正案が法人を含む民間企業を否定していない以上、法律の一人歩きが考えられるわけであって、そうした事態を想定し、民間事業者が第三者委託における受託者となる場合の委託基準については強化し明確にする必要がある。
以上の理由により、下記事項について明確な基準を明記すべきである。
ア.受託企業の経営基盤の健全性の担保
イ.水道事業体と同等の技術基盤の担保
2.広域化に当たっての要望事項
全水道としては広域化に当たって5つの前提条件を付記しているところであるが、この内、「広域化計画の前提」として水道基本問題検討会報告の「対応する行政施策の方向」に明記された事項については、政令か省令で明記すべきである。
ア.自己水源の放棄につながらないこと
イ.遊休施設を発生させないこと
ウ.コストの縮減や技術者の確保などを通じ、
実際に経営基盤の強化や事業の効率化につながること
エ.水道料金の引上げにつながらないこと
3.確保すべき政策誘導策
(1)受託契約に当たっての甲・乙対等の確保と
料金の高騰を抑制する施策について
第三者委託は、小規模事業体の経営的、技術的基盤の強化のために制度化されるものである。
しかしこの受・委託の契約は、財政的・技術的基盤が脆弱な側が委託者で、財政的・技術的基盤がしっかりとした大きな事業体もしくは水道用水供給者または民間事業者が受託側になるわけで、長期間での受・委託契約になること、経営面でのノウハウなどを含め、経営基盤がしっかりとした受託側が有利になり、契約上の甲・乙対等が確保されない可能性がある。これに加え、民間企業が受託者となった場合には、地方公営企業法では想定されていない利潤が料金に反映されることになり、利用者である住民の意に反して、料金高騰の結果を招き兼ねない問題が存在する。
以上の理由により、受・委託の契約に当たり、甲・乙対等の確保と料金の高騰を抑制する施策を政策的に考慮すべきである。
(2)広域化を推進に当たって配慮すべき施策について
地方分権一括法が通過し、政府としても「行政改革大綱」で地方公共団体を1000程度とする方針が打ち出されている。
このような状況から判断すれば、今後地方自治体の統合が進むと考えられるが、水道事業の広域化を必ずしも考慮しないことが考えられる。その場合、中山間地域の町村においては、第三者委託の制度化からも取り残される事業体が出てくることが考えられる。
したがって、このような事態が生じないよう、国・都道府県が協力して広域化計画を策定し、実施してゆくことが必要である。
また、今回の水道法一部改正の最も大きな改正点は、21世紀に向けて、全国どこの水道であっても安全な飲料水を供給し続けてゆくことが可能なように水道事業の制度的な枠組みを整備・確立することにあり、そのために、第三者委託の制度化が図られているものである。
この法改正の趣旨を踏まえ、しっかりとした財政的・技術的基盤が確保される「適性規模」がどの程度かを考慮に入れ、広域化を進めて行く必要がある。
以上を踏まえ、国と都道府県が協力し、水系なども考慮にいれながら事業体の意見を事前に聴取し、全国的な広域化の素案を提起するなど、政策誘導を行ってゆくことが必要である。
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